中常私塾 中常塾
豐中常文庫 ── 解説

倭姫命世記をやさしく
── 伊勢神宮はこうして始まった

行けども行けども、ここが自分の居場所だと思えない ── そんな心細さは、今も昔も変わりません。一人の皇女が、神のお告げを頼りに諸国を巡り、ついに「ここに居よう」と思える地にたどり着いた物語があります。それを記すのが『倭姫命世記(やまとひめのみことせいき)』。伊勢神宮(内宮)がどのように始まったのかを語る、神道五部書のひとつです。

あらすじ

主人公は、天照大御神の御杖代(みつえしろ=神の依代)となられた皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)です。倭姫命は御神体を奉じ、神のお告げに従って諸国を長く巡られました。「ここではない、さらに東へ」 ── そう導かれ続けた末に、五十鈴川(いすずがわ)のほとりに至ります。

神風(かむかぜ)の伊勢の国は、常世(とこよ)の浪(なみ)の重浪(しきなみ)帰(よ)する国なり。傍国(かたくに)の可怜国(うましくに)なり。是(こ)の国に居(を)らむと欲(おも)ふ。──『倭姫命世記』

この御教えのままに、伊勢の地が永久の御鎮座の地と定められました。神が長い時をかけて選ばれた地 ── それが伊勢である、と倭姫命世記は語ります。

懸税(かけちから)の起源

倭姫命が稲穂を瑞垣(みずがき)に懸けて捧げた故事は、今日まで続く神嘗祭(かんなめさい)の「懸税」の起源とされます。中常塾が外宮の初穗曳(はつほび)きや調献に連なるのも、この古い心の延長線上にあります。

中常塾が蔵する出口延佳校合本

中常塾の塾主は、寛文九年(一六六九)に出口延佳が校合・書写した『倭姫命世記』を所蔵しています。その書写本の画像と翻刻を、豐中常文庫で公開しています。

この物語を、直筆校合本そのままの姿で塾主とともに読み進める ──
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